事件ですよ!その3 最終話

実はこの日までに事件現場を反芻して、犯人の目星はつけていました。

10人くらい座れる大テーブルに、私達3人分の席を確保して、母と夫がオーダーに席を立ち、私が座ったまま荷物を見ている状態の時に、後から来た中年夫婦のような二人…。

私が母夫の帰着を待ち切れずに、席を立った時には確かに同じテーブルに座っていた…が、〜ここで1.2分無人状態〜母夫着席〜3分ほどで私が戻った時に、その中年夫婦はいなかった!!

ホンボシは、アイツらだ❗️

貴重品を手元から離した罪を覆い隠さんばかりに、中年夫婦の背格好や風体を必死に思い返しては、「いつか出会ったら、密かに警察に駆け込むぞー?」と決意を固めていました。

そんなアツい想いを持ちながら、無事に待ち合わせに現れた母に声をかけました。※時刻や場所を間違えたり、約束自体を忘れてしまい、待ち合わせ成功率は三割程度です。

「お母さん印鑑登録カード持ってきた?よく探せたね。」「うん。すぐ出てきた。これで印鑑証明取れるのよね。」

あ、あれ?お母さん、それマイナンバーカードじゃない?…そうか、マイナンバーカードは私が預からずに母の手元にあったんだ…じゃ今日は銀行に行くだけで良いのかな…いやマイナンバー停止してるから、やはり市役所で失くしてませんでした届出さなくちゃいけない…はーやっぱり、めんどくさいなー?

気を取り直し、「お母さん私印鑑作ったんだよー。盗られた印鑑と同じでお母さんの名前のハンコだよ。これを新しい銀行印と実印に…」と言い終わるか言い終わらないかの間に、母の手元を見て愕然?

母は、キョトンとした顔で盗られたはずの印鑑を手にしていました。

「お、お母さんちょっとバッグの中見せて!」と確認すると、これも盗られたはずの通帳と盗られたはずのエコバッグが畳まれて入っているではありませんか!!!

そうです。真犯人は母だったのです。お店のテーブルの上に自分(とお揃い)のエコバッグを見つけた母は中身を見て自分の通帳やカードが入っていることがわかり、(娘に預けたことを忘れて)自然に自分のメインバッグにしまっていたのです。そして私が血相を変えて、ないないない!と騒ぎ始める頃には、バッグにしまったことをすっかり忘れていたのです。

そこまで?そこまで認知症が進んでいるのか? と、あのやってしまった? な日々は何だったんだ? な思いが一気に押し寄せて、しばし呆然。

その後銀行と市役所に「発見届」を提出し、「犯人がお母さんで良かったよ。再発行だと時間もお金もかかるから。それにしても、無くなった時には焦ったー。」と言うと、

「あらー。でも、あなたが素早く銀行や交番に行ってくれたから、こんなに早く見つかったんじゃない?」

ちょっと込み入ったストーリーはもはや理解できないらしい……ああお母さん?

お店にいた御夫婦らしきカップル様…冤罪も良いところです。申し訳ありませんでした。警察であれこれ余計なこと言わなくて良かった…。